どんな気分?
「逃げ出したいの?」
ううん、歩きたいの。
「どんな気分?」
淋しいよ。
「どんな気分?返事の来るはずのない手紙を書き続けるのは。」
返事ならもらってるの。風に乗るのよ。
「伝書鳩?」
ううん。瞳の力。
「それってなにも起こってないってこと?」
…そうかもねえ。
「なんでそこにいるの?」
よくわからないわ。
「覚えてる?」
うん。飛行機雲と風と私。ぴんとした11月。覚えてる。
「嬉しい! 孤独さ。そっちはどう?」
ひとりでも歩けているよ、安心して。
「それって実は景色が流れてるだけで、一歩も歩けていないってこと、ない?」
そうかもねえ。
「聞いてよ。今死にたいの。」
私も。
「好きな人が、追想のラブソングばかり歌う。」
その美しさを共有できる日が来るから大丈夫。
「指輪もあった。」
もうないよ。
「希望はあった?」
わからないわ。
「まだ歩けている?」
まだ歩けている。
「死なないでね。」
あなたもね。
「どんな気分?届くはずのない月に手を伸ばすのは。」
あなたが見た滲んだ月光みたいに、優しくて淋しいよ。
「折れないで。」
折れないでね。
「才能、ない?」
なくても歩くの。
「なにか聞きたいことは?」
あと何回こんな夜を越えれば幸せになれるのかなあ。
「わからないわ。すぐにそこまで行くから。待っていて。」
嫌だ。進む。
「そっか。」
美しいものたちに出会う覚悟をしてね。
「喜んで!」
愛に向かい合う覚悟をしてね。
「喜んで!」
その切なさを忘れないでね。
「その愛おしさも忘れないでね。」
うん。